― 蜻蛉一号 ―

振り向いたら、歩けないよ。

待っていても、潮の風に体は錆びて。

微かなくつ跡も波にのまれる。

おなじ気がした。

たとえば君は僕で、僕が君。

同じ場所で生まれて、違うところで生きるんだ。

だから歩いて。

心はそのまま、行けるトコまで。

憶えているよ。

君の記憶は、僕が引き受けるから。



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― スケッチブック ―

きみが青いと言ったから、ぼくの空は青いのだ。

晴れて眩しい。

もしも、あのときぼくが赤と言ったなら、

きみの空は、

きっと今ごろ何色だろう。



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― プリズム ―

ガラス越しの虹と恋心。

七色の世界、君の闇を僕は知らない。

煌めく光を、君にあげる。

いつもみたいに笑わないで、

届いたのなら、ただ喜んで。

隔てるガラス、どうか振り返らずに

その向こうから手を振って。




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― 祈り ―

子供の聖女

白を求めて夜を食べた。

闇を払えば光に愛されると信じてた。





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― 振り子 ―

君の残像。

響く鼓動。

走る残響。

届く未来。

闇に浮かぶ、優しい幻。





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